新型コロナウイルス対策により債務膨張‼︎出口は有望分野の成長戦略⁈

新型コロナウイルスの感染拡大を受けた経済対策で、アメリカの今年度の財政赤字は過去最大の3兆3000億ドル、約350兆円規模に膨らむという見通しが発表されました。赤字額はリーマンショックのあとの2009年度のおよそ1兆4000億ドルを大きく超えて、過去最大となります。また、アメリカでは今も感染拡大が終息おらず、議会では追加の経済対策が検討されています。このためアメリカの財政状況は今後、さらに厳しくなるおそれも出てきています。

この様に当面は新型コロナウイルス対策の支出が優先ですが、いずれは債務残高の圧縮、財政状況の改善に向き合う必要が出てきます。今回は経済対策後の債務膨張とその出口について簡単に触れます。

公的債務の対GDP比率

世界は新型コロナウイルス対策として巨額の財政支出を行なっています。その総額は少なくとも11兆ドル、日本円にして約1100兆円です。財源は多くの国が新たな国債発行で賄っており、国際通貨基金によると公的債務がGDPに占める比率は先進国、新興国ともに第二次世界大戦を超えています。世界の公的債務は2020年に対世界GDPで史上最高水準の101.5%に達すると見込まれています。

国際通貨基金HPより引用

公的債務の削減

中央銀行による低金利政策により今現在、財政出動にためらう国はありません。しかし中長期的には債務水準を正常化する必要があります。政府が公的債務を削減する方法は増税、歳出削減、成長戦略の3つがあります。

増税:環境対応や格差是正を目的とした増税が主流です。具体的にはEUは環境規制の緩い国からの輸入品に関税を課す「国境炭素税」を検討しています。また、アメリカでは民主党のバイデン大統領候補が巨大企業や富裕層へ対する増税を訴えています。ただし、新型コロナウイルスの影響で企業の収益が厳しく、この環境下での増税は景気を冷やしかねません。

歳出削減:世界各国は今、失業対策や企業の資金繰り支援などで巨額の支出に動いています。新型コロナウイルスの感染拡大に伴う景気低迷が長引くとの見方が強まる中、経済の下支えである政府の歳出を削減することは難しいと考えられます。また、新型コロナウイルスを大義名分として経済対策を実施しやすい環境にあり、選挙を控えた政治家のとっては人気取りのチャンスであることからも、歳出を削減する可能性は低いと考えられます。

成長戦略:アメリカは第二次世界大戦の戦費で財政再建が課題となった時期があります。財政再建に貢献したのは1950年代にかけてのアメリカ経済の急成長であり、大量生産システムやコンピューター技術などの技術革新で生産性が向上し、終戦時に110%を超えていた債務残高のGDP比率が1961年に50%まで低下しました。一定の公的債務があっても経済の成長力を高められればGDP比で見た公的負担は軽減されます。そのため今最も必要なのは成長分野を見極めて資金を振り向けることであり、実際に欧米はその方向に舵を取り始めています。EUは7月下旬、約7500億ユーロ(約94兆円)の復興基金の創設で合意しました。温暖化ガス排出実質ゼロといった目標に向けて国際競争力のある産業をさらに育成しようとしています。フランス政府も2年間で1千億ユーロの追加経済対策を発表し、脱炭素経済へ転換を進め、2022年までにコロナ前の成長率を取り戻すといいます。ドイツ政府は税制面でデジタル産業の拡大に注力しており、ブロックチェーン技術や次世代通信規格5Gの先端技術などの育成を急いでいます。

総括

簡単にまとめると『欧米はポストコロナの成長戦略を模索しており、今後の成長が見込める有望な分野へ投資し、経済の成長率を高めることで公的債務の対GDP比率を抑制しようとしている。そして今現在、資金が投入される分野は環境とハイテクである。』です。

環境とハイテクと言えば、クリーンエネルギーETFであるPBDやICLN、ハイテク銘柄中心のETFであるQQQですが、直近1年間のパフォーマンスはS&P500を上回っています。このことからも現在、資金が集まっている成長分野は環境とハイテクであると言えます。ただしこれは中長期的な話であるので、今後も環境とハイテクに資金が集まると割り切るのではなく、各国政府がどの分野へ注力するのか見極めてその潮流に上手く乗ることが重要かもしれません…余談ですが先日PBDとICLNを売却してしまったのでどこかのタイミングで買い直すか考えています。

ヒロテル

将来における国の動向を考えることは長期的な資金の流れを捉えることであり、どのセクターや銘柄にポジションを取るべきか判断するための一助となると考えています。