【ASXC】将来お世話になるかも…手術支援ロボットを製造するアセンサスサージカル銘柄紹介
今回紹介する銘柄は手術支援ロボット”センハンス”を扱うアセンサスサージカルです。アセンサスサージカルは時価総額約7億ドルの赤字企業、一株当た3ドル強のいわゆるペニー株です。株主としては増資や倒産などリスクの高い銘柄となります。私はリスクと将来性を天秤にかけた時に、将来性が勝ると判断したので投資していました…先日、利益確定済みです。今後株価が下がった時に投資したいと考えています。
手術支援ロボットとは医師がモニターに映し出される映像や画像を見ながら、コントローラでロボットを操作して手術を行うロボットのことです。この市場はインテュイティブサージカルの”ダビンチ”が圧倒的に先行しており、日本を含む世界中で導入が進んでいます。インテュイティブサージカルの前回決算と今後の見通しは良好であり、手術支援ロボットにおいても経済活動再開を印象付けるものだったと思います。
先進国では人々の高齢化に伴って、手術など外科的治療が必要な病気の数が多いにも関わらず、若手外科医の数は減り続けています。そこで、過疎地や医師の少ない地域でも外科治療が受けられるように、医療機器の開発が進んでいます。具体的なソリューションとしてAI技術や手術支援ロボットの普及が期待されています。日本の、特に地方在住の人ならば実感できると思いますが、少子高齢化や医師数の偏りなどを考慮すると、今後、手術支援ロボットやAI診断のような新たな医療サービスの普及は必要不可欠ですよね。

手術支援ロボット”センハンス”
腹腔鏡手術支援ロボットであるアセンサスサージカルのセンハンスは先行品のダヴィンチにはない、触覚機能を有しています。また、術中動作のデータ蓄積によるAI機械学習を行い、アイトラッキングなどの視覚的技術とARによるナビゲート機能を拡充しています。これら特徴は企業HPに記載ありますが、センハンスを導入した日本の豊島病院の広報に以下の通り記述があります。
当院で導入された手術支援ロボットSenhanceSurgicalSystem (センハンス)は腹腔鏡の延長線上で、手振れなく安定的な手技を可能にするというコンセプトで開発されました。鉗子(手術の際に組織などを挟んだり、牽引する器具)の動きがコンピュータ制御されていて、手振れ補正機構により鉗子先端のブレを最小限に抑えることができ、血管周りなどの細かい操作を正確かつ精緻に行うことが出来ます。手術支援ロボットとして広く普及しているダヴィンチには触覚機能がありませんが、センハンスには触覚機能があります。そのため、組織の把持(しっかりと掴むこと)や糸を用いた結紮(血管を縛って結ぶこと)が非常に安全にできます。カメラが手術する医師の視線に反応して動き、コンピュータ制御されているため、安定した良好な視野の中で手術を行うことが可能となります。さらに、3Dカメラを使用して手術は行われます。保険適用上の扱いは腹腔鏡であるため、腹腔鏡手術として収載されている術式は全て保険診療として施行可能です。したがって、手術にかかる費用は通常の腹腔鏡手術と同額になります。
としま月刊パティオVol.124
非常に簡潔ですがセンハンスの特徴は以下の通りです…
- センハンスは触覚フィードバック機能、アイトラッキング(視覚追跡)機能、ARによるナビゲート機能を有する。
- センハンスは術中動作とパフォーマンスのデータを蓄積しAIによる機械学習を行っている。
- センハンスはFDA認証を取得している。
- センハンスは標準手術機器が再利用可能。特定の手術ではダヴィンチよりもコストパフォーマンスが勝ると報告あり。
医療用ロボットの市場推移予測
市場調査会社MarketsandMarketsによる5月6日発行のレポート「手術用ロボットの世界市場 (~2026年)」によると「世界の手術用ロボットの市場規模は予測期間中17.6%のCAGRで推移し、2021年の64億ドルから、2026年には144億米ドルの規模に成長すると予測される。ロボット支援手術の利点、手術ロボットの技術的進歩、手術ロボットの導入の増加、医療ロボット研究への資金提供の増加などの要因が同市場の成長を推進している。一方、ロボットシステムの高コスト性が市場のさらなる成長を抑制すると予測される。」とのこと。医療という人々の高齢化と共に需要が高まる分野ですし、今後も明るいようですね。
2021年4月、手術支援ロボットのリーダー企業インテュイティブサージカルの「ダヴィンチ」と、アセンサスサージカルの「センハンス」の手術パフォーマンスを比較した論文が報告されました。これによるとセンハンスは子宮摘出手術においてダヴィンチと同等の手術時間で、より低コストのアプローチを実施できたと記述があります。具体的なコストはダヴィンチが1393ドルに対してセンハンスが559ドルと約70%のコストダウンであったとのこと。
この他にもセンハンスを用いた手術に関する報告は幾つか報告されています。今後も様々な手術で実績を積み重ねていく事を期待しています。因みにセンハンスに関する論文はPubMedで検索すると確認することができます。
目的: センハンス腹腔鏡下子宮摘出術 (TLH) 症例と類似のダヴィンチロボット症例および腹腔鏡補助下膣式子宮摘出術 (LAVH) 症例からの遡及的、学習曲線良性子宮摘出術の費用および症例時間データの比較。
センハンスとダヴィンチの腹腔鏡補助下膣式子宮摘出手術に対する症例時間と器具コスト比較評価(2021年4月15日)
方法: 米国とヨーロッパの4つの病院の6人の外科医からの機器のコスト、コンソール時間、および症例時間の分析と、CAVAlyticsデータベースから抽出されたレトロスペクティブ、シーケンシャル da Vinci TLH および標準腹腔鏡 LAVH 症例との比較。
結果:ダヴィンチの学習曲線と比較した場合、Gyn の外科医の学習曲線におけるSenhance Gynの外科医は、同等のコンソール時間 (91.5 対 96 分) で、より低い中央機器コスト (それぞれ 559 ドル対 1393 ドル) を達成; SenhanceとLAVHの訴訟費用は同等でした ($559 対 $498)。
結論:良性子宮摘出術ではセンハンスシステムは、同様のダヴィンチロボットの症例と比較して、同等の症例時間で低コストのアプローチを提供する可能性があります。
アセンサスサージカルはアメリカ、ヨーロッパ、日本で主にサービスを展開しています。日本ではセンハンスの研修センターの設立や豊島病院へのセンハンス導入などが報告されていますね。その他にもバルト三国のリトアニアではクライペダ大学病院で219人がセンハンスを使用した実績があり、結果は非常に良好とのこと。記事内部の医師のコメントには、ロボット手術の成功例とメリットを評価して2台目のロボットの導入を既に計画しているとあります。手術実績もそうですが、センハンスのサービス拡大に関する報告は今後も要注目です。
所感
今年の4月に手術支援ロボット業界のリーダー企業インテュイティブサージカルの”ダヴィンチ”と、アセンサスサージカルの”センハンス”の手術パフォーマンスを比較した論文が報告されました。これによると子宮摘出手術においてセンハンスはダヴィンチと比較して、同等の手術時間で約70%コストパフォーマンスが優れていたとのこと。
これは手術支援ロボットの導入を検討している医療機関に対してインパクトありそうですね。やはり新規設備を導入するコストとそのパフォーマンスは最も重要視される点ですからね。なお、PubMedで検索するとセンハンスに関する論文が幾つか報告されています。今後も様々な手術で使用実績を重ね、その有効性を示して欲しいですね。
2021年6月上旬現在、インテュイティブサージカルの時価総額は約990億ドルです。これに対してアセンサスサージカルの時価総額は約7億ドルとおおよそ100分の1以下です。アセンサスサージカルはPSRが非常に高く、赤字企業であるため今後も増資のリスクが伴いますが、その分、株価の上昇余地は大きいと考えています。私はリスクを考慮しても、これに勝る将来性があると感じているため投資を検討しています。
アセンサスサージカルは株の最低購入単価が低いこともあって、投資するタイミングを分散しやすいのが良いですね。少額から積み立てることが可能ですし、長期で期待しています。

2021年6月18日現在の時価総額7.46億ドルであり、これに対して2020年度の総売上3175千ドルです…時価総額は年間売上の235倍です‼︎流石にPSR高くないですかね。新型コロナウイルス影響を受けていない、2019年度の売上が8531千ドルです。これで計算するとPSRは低下して87.4です。2021年度は新型コロナウイルス影響からの回復かつ手術支援ロボットの市場拡大などが見込まれますし、2019年度の売上を上回ることを期待していますが、それでも今の株価は如何なものでしょうか。せめて2ドル台…今年は既に増資していますが再び増資することがあるならば、その際に大きくポジションを取りたいですね。
また、センハンスはダヴィンチとパイを奪い合うというよりも、機能性やコストパフォーマンスによる差別化を図り、ダヴィンチとは違った需要を掘り起こしてくれることを期待しています。センハンスは日本にも導入されているので、もしかするとお世話になるかもしれませんね。